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おせちの話2015年6月1日


◆おせちの由来

おせち料理が現在のような形になったのは江戸時代の後半です。osechi2005

そもそもの由来は正月の節供(せちく)料理で、宮中の「お節供(おせちく)」の行事からきています。
お節供は文字を見るとわかるように節日に神に供えたもの。宮中では1月1日、7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日といった節日には神に神饌(しんせん)を供え祭り、宴をひらきました。

このように、おせち料理は宮中のしきたりが民間に広まったものですが、やがて正月にふるまわれる御馳走だけが「おせち料理」と呼ばれるようになりました。

現在に至っては各地の土地や時代とともに変化し、家庭によってもその形は様々です。

おせち料理は伝統をつたえながらも、実はとっても柔軟な食文化なのではないでしょうか?お重箱の中には、庶民の心意気が詰まっているのです。
おせち料理を作りおきするのは、お正月に女性を休養させるためとか。
(少し前までは今のように年始にお店が開いている所も少なく、この日ばかりは家族揃って家の中で…という家庭も多かったのではないでしょうか?)

お正月は年神様をお迎えし、おまつりする儀礼です。料理を作りおきするのは、年神様がいらっしゃる間に煮炊きすることを慎む…ということから由来しているといいます。

幼い頃、年末の慌ただしい空気の中に、ほっこらと煮しめの香りが満ちてくると、心が浮き立つ思いがしたものです。

おせち料理には不思議な郷愁があります。

◆おせち料理の意味

●黒豆……まめ(健康)に暮らせるように

●数の子……子孫繁栄

●田作り……(江戸時代の高級肥料として片口いわしが使われたことから)豊年豊作祈願

●昆布……よろこぶ

●鯛(タイ)……めでたいに通じる語呂合わせ。江戸時代にはじまった七福神信仰とも結びつき、(恵比須様が抱てますよね。)鯛はおめでたい魚としてあまりにも有名。

●錦たまご(ニシキタマゴ)……卵の白味と黄味をわけて、ニ色でつくった料理の二色(ニシキ)とおめでたく豪華な錦との語呂合わせ。

●金平ごぼう(キンピラゴボウ)……江戸初期に誕生したごぼう料理ですが、当時、坂田金平武勇伝が浄瑠璃で大ヒットしていました。豪傑金平にちなんで、この滋養たっぷりのごぼう料理を金平ごぼうと呼ぶようになりました。強さや丈夫さをねがったのですね。

●紅白なます(コウハクナマス)……お祝の水引きをかたどったもの。

●紅白かまぼこ(コウハクカマボコ)……かまぼこのはじめは竹輪のような形をしていました。やがて江戸時代、様々な細工かまぼこが作られるようになると、祝儀用としてかかせないものになっていきました。紅白のおめでたい彩りから、おせちの定番になったのでしょうね。

●栗金団(クリキントン)……「栗金団」というお菓子は室町時代に既にありましたが、いわゆる、おせち料理の栗金団とは別物だったようです。この頃の栗金団は栗餡を丸めたもの。現在の形になったのは明治時代のことです。「金団」とは黄金の団子という意味です。くちなしの実で黄色に色付けて仕上げます。名前の語呂合わせではなく、見た目の“黄金”の色合い、豪華に見える様子から、おせちの定番になったものと思われます。

●伊達巻き(ダテマキ)……「伊達」とは華やかさ、派手さを形容します。華やかでしゃれた卵巻き料理ということで、お正月のお口取り“晴れの料理”として用いられました。語呂合わせや子孫繁栄の祈りというより、色や形からおせち料理に登場するようになったようです。さらに、伊達巻きは、蒲鉾を作る際、つなぎに卵白を使用しますが、黄味の部分が余ってしまうので、それを活用するために考えだされたものです。お口取り料理の蒲鉾とはこんな関係だったのですね。ところで、名前については他説があり、和装で使用する「だてまき」に縞模様がにているから…というのもあります。

このように、元旦に祝う屠蘇の祝肴(おせち料理)は、無病息災と子孫繁栄の願いを祈ったものです。その願いを食べ物の形や名前の語呂合わせに託してしまうところに、ユーモアあふれる江戸時代後期町人文化のおおらかさ、大きさを感じます

◆お重の基本

おせちは五段重が基本の形です。

お重に詰める料理の順番は

 一の重が祝肴

 二の重が酢の物

 三の重が焼き物

 与(忌み数字の四をきらってこう書く)の重が煮物

 五の重が控えの重

とする場合が多いようです。

しかし、その土地や家風によって、二の重が焼き物、三の重が煮物、与の重が酢の物としているところもあり、絶対的な決まりごととして、とらわれることはないと思います。

昔と比べ現在では本格的な五段重のある家庭は少なく、三段重が一般的なのではないでしょうか。

おせち料理は庶民文化が花開いたもの…とすれば、その時代にあった形や盛付けがあって良いと思います。形式にとらわれるよりも、新たな年を祝う心、家族の息災や繁栄を祈る心が、一番大切なことなのではないでしょうか。

江戸後期から江戸の人々の暮らしが豊かになり、正月の料理も様々なものができましたが、おせち料理の意味や謂れに共通しているのは、豊かに暮らせること、一族の繁栄を願うことです。

核家族化が多く昔のように大家族や一族揃ってのお正月という風景も最近ではまれなのかもしれません。

大切なのは「おせち料理」にこめられた心を知ることではないでしょうか。

家族や親戚でワイワイと語り合いながら、みんなで食べるのが、おせち料理の本来の形なのではと思います。

遠く離れていても、一年のはじまりには家族が集い、感謝と祈りをこめて新しい年を祝いたいものですね。

今年もあとわずか新年の早めの準備にかめいの手作りの御節はいかがですか?

 


(文:山本美奈子)